公開日:
2026/8/24
更新日:
2026/8/24
マーケター1人を採用するのに、結局いくらかかるのか【総額試算】 |JIMOTO STUDY

この記事の筆者
中井 寛太
株式会社JIMOTO Marketing Share BureauでマーケティングやPRを担当。Web系の広告代理店で、ブランディングマネージャーとして活動した経験を活かし最新のトレンドやビジネス情報を執筆します。
「年収480万円で1人」の実際の負担額
マーケターを1名採用する予算を検討するとき、多くの企業がまず年収を考えます。しかし企業が実際に負担する金額は、年収の1.5倍から1.8倍に達します。
見落とされやすい費目は、社会保険料の事業主負担、人材紹介手数料、ツールと検証予算、そして戦力化までの空白期間です。順に確認します。
相場の基準:公的統計が示す水準
指標 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
Webマーケティング職の年収(全国平均) | 736.8万円 | 厚生労働省 job tag(令和7年賃金構造基本統計調査を加工) |
同職種の平均年齢 | 43歳 | 厚生労働省 job tag |
同職種の月間労働時間 | 158時間 | 厚生労働省 job tag |
一般労働者の時間当たり賃金 | 3,633円 | 厚生労働省 job tag |
ハローワーク求人賃金(月額) | 26.4万円(令和6年度) | 厚生労働省 job tag |
ハローワーク有効求人倍率(同職種) | 0.54倍(令和6年度) | 厚生労働省 job tag |
全国の正社員有効求人倍率 | 0.99倍(令和8年3月) | 厚生労働省「一般職業紹介状況」 |
この表で注目すべきは、年収736.8万円とハローワーク求人賃金26.4万円(年換算約317万円)の落差です。
前者は「企画・調査事務員」という職業分類に基づく統計で大企業を含むため、中小企業がそのまま適用する数字ではありません。後者はハローワーク掲載求人の提示額です。実際の中途採用は民間の転職エージェント経由が主流であり、そこでの提示水準はハローワーク求人より高くなります。
つまりハローワークの求人倍率が0.54倍と低いことをもって「採りやすい」と判断するのは誤りです。マーケティング人材の主戦場はハローワークの外にあります。転職市場の募集時年収レンジは、job tagからリンクされている業界団体資料(転職賃金相場2025 WEBマーケティング)でも確認できます。
初年度の総額試算
年収480万円、経験3〜5年の中途採用を想定します。地方中小企業が現実に提示しうる水準です。
費目 | 金額 | 算出根拠 |
|---|---|---|
給与(賞与込み) | 480万円 | 提示年収 |
社会保険料の事業主負担 | 72万円 | 給与の約15%(健康保険・厚生年金・雇用保険・労災の事業主負担合計の概算) |
人材紹介手数料 | 150万円 | 理論年収の30〜35%が一般的な水準 |
求人媒体・スカウト費用 | 30万円 | エージェント併用時の追加費用 |
面接・選考の社内工数 | 20万円 | 経営層・現場の延べ工数を人件費換算 |
PC・ソフトウェア・ツール | 40万円 | 業務環境の整備 |
広告・施策の検証予算 | 60万円 | 着任後の試行に必要な最低限 |
研修・外部セミナー | 40万円 | 立ち上がり支援 |
労務・評価の管理工数 | 10万円 | 入社手続き、評価面談等 |
初年度合計 | 902万円 | 提示年収の約1.9倍 |
※社会保険料率は協会けんぽ・日本年金機構の公表料率をもとにした概算です。実際の率は業種・地域・年度で異なります。人材紹介手数料は各社の契約条件によります。本表は自社作成の試算モデルであり、公的統計そのものではありません。
見えにくい第4のコスト:空白期間の機会損失
金額表に現れないものの、実質的に最も大きいのがこれです。
job tagは、Webマーケティング職について、入職後に一通り仕事を覚えて上司や先輩の助言を得ながら自分で仕事を回していけるようになるには、個人差はあるものの1年程度が必要とされると記しています。
これに採用活動の期間を加えると、次のようになります。
段階 | 期間の目安 | この間に起きていること |
|---|---|---|
要件定義・募集準備 | 1〜2ヶ月 | 施策は止まったまま |
募集・選考 | 2〜4ヶ月 | 施策は止まったまま |
内定〜入社(現職の引き継ぎ) | 1〜2ヶ月 | 施策は止まったまま |
入社〜戦力化 | 約12ヶ月 | 徐々に立ち上がる |
合計 | 約16〜20ヶ月 | ― |
意思決定から成果が安定するまで、およそ1年半。2026年版中小企業白書が「経営環境の転換期において現状維持は最大のリスク」と述べているのは、こうした空白期間の累積を念頭に置いたものです。
この期間の機会損失を金額化することは困難ですが、月間の目標受注額が500万円の企業であれば、施策が止まっている12ヶ月分の逸失は決して小さくありません。
早期離職が起きた場合の損失
採用が成立しても、定着しなければ振り出しに戻ります。仮に入社11ヶ月で退職した場合を試算します。
費目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
支払済み給与・社会保険料(11ヶ月分) | 約506万円 | 回収不能 |
人材紹介手数料 | 150万円 | 返金規定は通常6ヶ月以内。11ヶ月では返金なし |
教育・研修投資 | 40万円 | 回収不能 |
再採用にかかる費用 | 180万円 | 手数料+媒体費 |
再度の空白期間 | ― | さらに12〜16ヶ月 |
損失合計(金額のみ) | 約876万円 | 時間の損失は別途 |
早期離職は「運が悪かった」で片づけられがちですが、多くの場合、要件が曖昧なまま採用したことに原因があります。何を任せたいのかが不明確な状態で入社した人は、期待とのずれに直面して離れます。
採用要件の整理には、厚生労働省が無料で提供しているjob tagの「人材採用要件整理」ツールと「タスク整理」ツールが利用できます。公的なツールで職務を分解すると、その要件を全て満たす人材の市場価値が見えてきます。
採用コストを下げる、あるいは避ける方法

方法 | 削減できるコスト | 留意点 |
|---|---|---|
リファラル・自社応募を増やす | 紹介手数料150万円 | 母集団形成に時間がかかる |
未経験者を採用して育成する | 年収を100〜150万円圧縮 | 戦力化までさらに時間を要し、教育できる人が社内に必要 |
副業・業務委託を活用する | 社会保険料・紹介手数料 | 稼働時間が限られ、戦略設計までは任せにくい |
外部のマーケティング組織を使う | 採用費・社会保険料・空白期間 | 商材理解の初期段階は社内の協力が必要 |
既存社員を兼任で立て、外部が伴走する | 採用費全額 | 兼任者の業務調整が前提 |
三つ目以降が現実的な選択肢になる理由は、労働市場の構造にあります。job tagが示すWebマーケティング職の就業形態では、正規の職員・従業員が61.1%である一方、自営・フリーランスが37.0%を占めています。この職種は、雇用以外の形で機能を調達できる市場がすでに成立しています。
採用と外注を3年累計で比較した試算はマーケター採用と外注の3年比較にまとめています。
よくある質問
質問 | 回答 |
|---|---|
年収480万円は妥当な設定ですか | 地方中小企業が提示しうる水準として設定しました。首都圏の同職種求人と比較すると低めであり、応募が集まりにくい可能性があります。自社の想定額に置き換えてご覧ください。 |
社会保険料の約15%という数字の根拠は | 健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の事業主負担分の合計の概算です。正確な率は協会けんぽおよび日本年金機構が公表する料率表をご確認ください。 |
紹介手数料は交渉できますか | 契約条件によります。返金規定の期間(入社後何ヶ月以内なら何割返金か)は必ず確認してください。 |
ハローワークだけで採用できませんか | 可能性は否定できませんが、同職種のハローワーク求人賃金は月26.4万円(令和6年度)であり、経験者の希望水準と乖離しやすい点にご留意ください。 |
未経験者を採用する場合の注意点は | 教育できる人材が社内にいることが前提です。教える人がいない状態で未経験者を採用すると、双方にとって不幸な結果になりやすくなります。 |
参考文献(公的機関)
出典 | 内容 | URL |
|---|---|---|
厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」Webマーケティング | 年収、労働時間、求人賃金、求人倍率、戦力化期間 | |
厚生労働省 job tag「マーケティング・リサーチャー」 | 関連職種の情報 | |
厚生労働省 job tag「人材採用要件整理」ツール | 採用要件の整理(無料) | |
厚生労働省 job tag「タスク整理」ツール | 職務の分解(無料) | |
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年3月分及び令和7年度分)」 | 有効求人倍率 | |
e-Stat「令和7年賃金構造基本統計調査 都道府県別」 | 地域別の賃金水準 | https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?tclass=000001229518&cycle=0 |
厚生労働省「しょくばらぼ」 | 企業の残業時間・有給取得率などの職場情報 | |
経済産業省・中小企業庁「2026年版中小企業白書」 | 人手不足と経営判断 | https://www.meti.go.jp/press/2026/04/20260424005/20260424005.html |
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記事監修―――
株式会社JIMOTO Marketing Share Bureau
代表取締役 鶴 智之(プロフィール)
株式会社JIMOTO Marketing Share Bureau代表取締役。キャリアを通してBtoBマーケティングのクライアントワークに従事。また前職では、株式会社Resorzの取締役を務め、海外ビジネス支援事業にも一部関わる。200社以上のマーケティング支援実績と数多くの自治体案件のPM経験などの実績を保有。地域の中小企業の成長こそ真なる地域活性化。「マーケティングで地域を元気に」をモットーに地域の企業の成長を支援。
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