公開日:
更新日:
導入事例インタビューの作り方|依頼の仕方・質問項目・60分の進行表

この記事の筆者
中井 寛太
株式会社JIMOTO Marketing Share BureauでマーケティングやPRを担当。Web系の広告代理店で、ブランディングマネージャーとして活動した経験を活かし最新のトレンドやビジネス情報を執筆します。
「商談で『同じような会社の事例はありますか』と聞かれるが、すぐに出せるものがない」「お客様に事例の協力を頼みたいが、どう切り出せばいいか分からない」。BtoBの中小企業から、よくいただく相談です。
導入事例は、自社が書く説明よりも、お客様の言葉のほうが信頼されます。一方で、依頼の仕方や質問の準備を間違えると、断られたり、「満足しています」としか書けない薄い記事になったりします。
本記事では、200社以上の中小企業のマーケティングを支援してきた当社の経験をもとに、次のことを解説します。
導入事例が中小BtoB企業の商談で効く理由
お客様に断られにくい依頼の仕方と、社名非公開などの選択肢
インタビュー当日の60分の進行表と、質問項目
「ビフォー→決め手→アフター」で書く事例記事の作り方と、公開前の確認
営業・Web・ホワイトペーパーでの使い回し方と、そのまま使える質問票(Excel)
導入事例とは?中小BtoB企業こそ作るべき理由
導入事例とは、自社の商品やサービスを使ったお客様に話を聞き、導入前の課題・選んだ理由・導入後の変化をまとめたものです。BtoBでは、知名度で大手にかなわない中小企業ほど、事例が「信頼の代わり」になります。
BtoBの発注は、担当者が社内で上司や決裁者を説得して決まります。そのときに担当者が使える材料が、「同じような会社がこう変わった」という事例です。
場面 | 事例があると何が変わるか |
|---|---|
Webサイトを見た見込み客 | 「自社と同じ業種・規模の会社が使っている」と分かり、問い合わせの不安が減る |
初回の商談 | サービスの説明より先に、具体的な変化のイメージを伝えられる |
担当者の社内説明 | 担当者が上司に見せる資料として、そのまま使ってもらえる |
比較検討の最終段階 | 価格以外の判断材料(相談のしやすさ、成果の出方)を示せる |
他社のBtoBマーケティングの取り組みを知りたい方は、BtoBマーケティングの成功事例の記事もあわせてご覧ください。
導入事例ができるまでの流れ
結論から言うと、導入事例は依頼から公開まで1〜1.5か月を見ておくと無理がありません。時間がかかるのは、インタビューそのものより、日程調整と先方の確認です。
ステップ | やること | 期間の目安 |
|---|---|---|
1. 候補を選ぶ | 成果が出ていて、関係の良いお客様を3社ほど選ぶ | 1日 |
2. 依頼する | 担当営業から口頭で打診し、メールで正式に依頼する | 1〜2週間 |
3. 準備する | 取引の経緯と数字を社内で確認し、質問票を先方に送る | 3〜5日 |
4. インタビュー | 60分で話を聞く。オンラインでも可 | 1日 |
5. 記事を書く | ビフォー→決め手→アフターの構成で原稿を作る | 3〜5日 |
6. 先方確認・公開 | 原稿を先方に確認してもらい、修正して公開する | 1〜2週間 |

お客様への依頼の仕方|断られにくい頼み方
断られにくくするコツは、「先方の負担が小さいこと」と「先方にもメリットがあること」を最初に伝え、公開範囲を先方に選んでもらうことです。お願いするのはこちらなので、先方が断りやすい余地も残しておきます。
どのお客様に頼むか
最初の1社は、成果の数字が出ていて、担当者との関係が良いお客様を選びます。加えて、これから増やしたい顧客層に近い業種・規模のお客様だと、事例の使い道が広がります。
選ぶ基準 | 理由 |
|---|---|
導入から3か月〜1年ほど経っている | 変化や数字が出ていて、導入前のことも覚えている |
担当者との関係が良い | 本音を話してもらいやすく、依頼も受けてもらいやすい |
増やしたい顧客層に近い | 見込み客が「自社と同じだ」と感じやすい |
担当者が社内で発信したい立場にある | 事例への登場が、担当者自身の実績にもなる |
先方のメリットを伝える
事例への協力は、先方にとっても良いことがあります。依頼するときは、次のようなメリットを具体的に伝えます。
先方のメリット | 伝え方の例 |
|---|---|
会社の宣伝になる | 「御社の取り組みとして、Webサイトで紹介させてください。御社サイトへのリンクも入れます」 |
担当者の実績になる | 「ご担当者様のお取り組みを、社内でもご紹介いただける形にまとめます」 |
取り組みの振り返りになる | 「これまでの成果を一緒に整理する時間にもなればと思っています」 |
原稿を自由に使える | 「完成した記事は、御社の採用ページや会社案内でもお使いいただけます」 |
社名公開・匿名の選択肢を用意する
社名を出すことが難しいお客様も少なくありません。公開範囲をいくつか用意して先方に選んでもらうと、協力を得やすくなります。
公開範囲 | 出す情報 | 向いているケース |
|---|---|---|
実名・顔写真あり | 社名、担当者名、写真、ロゴ | 先方も発信したい。最も信頼されやすい |
社名のみ公開 | 社名、部署・役職(氏名・写真なし) | 担当者が顔出しを避けたい |
社名非公開 | 業種、地域、従業員規模(例:福岡県のコンサル企業・従業員4名) | 取引先との関係などで社名を出せない |
営業資料のみ | 社名非公開で、Webには出さず商談でだけ使う | 公開には抵抗があるが、協力はしたい |
社名非公開でも、業種・地域・規模・数字がそろっていれば、事例としての効果は十分にあります。
依頼メールの型
いきなりメールを送るのではなく、まず担当営業が打ち合わせの最後などに口頭で打診し、前向きな反応があればメールで正式に依頼します。メールには次の5つを入れます。
お願いしたいこと:導入事例としてお話を伺いたいこと
先方の負担:オンラインで60分程度。事前に質問票を送ること
公開範囲:実名・社名のみ・社名非公開から選べること
確認の約束:公開前に必ず原稿を確認いただき、OKが出るまで公開しないこと
断りやすさ:難しい場合は遠慮なくお断りいただいてよいこと
インタビューの準備
インタビューの質は、準備で決まります。当日に「導入したきっかけは?」から聞き始めると、時間の多くが経緯の確認で終わってしまいます。
準備すること | 内容 |
|---|---|
取引の経緯を確認する | 問い合わせの経路、商談の回数、導入の時期、担当営業のメモを読む |
数字をそろえる | 社内で把握している成果の数字(件数、期間、目標と実績など)を確認する |
仮説を立てる | 「決め手はおそらく〇〇」と予想し、確かめる質問を用意する |
質問票を送る | 3〜5日前に先方へ送り、数字の確認をお願いしておく |
役割を決める | 聞き手(進行)とメモ係を分ける。担当営業は同席しても進行はしない |
録音の了承を取る | 原稿作成のためだけに使うことを伝え、了承を得る |
担当営業が聞き手になると、先方が気をつかって本音を言いにくくなることがあります。進行は、マーケ担当や社外の聞き手が行うのがおすすめです。
インタビュー当日の流れ|60分の進行表
60分のうち、いちばん時間を使うのは「導入後の変化と数字」です。ここが事例の中心になるため、前半の自己紹介や経緯は短く進めます。
時間 | パート | やること |
|---|---|---|
0〜5分 | あいさつ | お礼、趣旨の説明、公開範囲と録音の確認 |
5〜10分 | 会社と担当者の紹介 | 事業内容、担当者の役割 |
10〜20分 | 導入前の課題 | 当時困っていたこと、そのままだと何が起きていたか |
20〜30分 | 比較検討と決め手 | 他に検討した方法、当社を選んだ理由、不安だったこと |
30〜45分 | 導入後の変化 | 変わったこと、数字、社内の反応 |
45〜55分 | これからと、検討中の方へ | 今後の取り組み、同じ悩みを持つ会社へのひと言 |
55〜60分 | 今後の流れ | 原稿確認の日程、写真の手配、お礼 |

導入事例インタビューの質問項目
質問は、記事の構成(ビフォー→決め手→アフター)に合わせて6つのパートで用意します。各パートで「なぜその質問をするのか(ねらい)」を決めておくと、話がそれたときに戻しやすくなります。
パート | 質問の例 | ねらい |
|---|---|---|
導入前の課題 | 当時、どんなことに困っていましたか。そのままだと、何が起きていたと思いますか | 読み手が「うちも同じだ」と感じる状況を引き出す |
比較検討 | 他にどんな方法や会社を検討しましたか。社内で自分たちでやる案はありましたか | 見込み客が比べている選択肢を知る |
決め手 | 最終的に当社を選んだ理由は何ですか。依頼する前に不安だったことはありますか | 選ばれた理由と、解消すべき不安を知る |
導入後の変化 | 導入して、何が変わりましたか。社内の反応はどうでしたか | ビフォーとの違いを具体的な場面で語ってもらう |
数字 | 件数や時間など、数字で表せる変化はありますか。目標と比べてどうでしたか | 事例の説得力を高める数字を確かめる |
これから検討する人へ | 同じ悩みを持つ会社に、ひと言お願いします | 記事の締めと、見込み客の背中を押す言葉をもらう |
話を深めるコツ
「たとえば?」と聞き返す:「良くなりました」で止まったら、「たとえばどんな場面で感じましたか」と具体的な場面を聞きます。
数字は幅でもよいと伝える:「正確でなくても、だいたいで構いません」と伝えると答えてもらいやすくなります。公開前の確認で正しい数字に直してもらいます。
不満や苦労も聞く:「大変だったことはありますか」と聞くと、話にリアリティが出ます。記事に載せるかは、先方と相談して決めます。
事例記事の書き方|ビフォー→決め手→アフター
事例記事は「導入前の課題(ビフォー)→選んだ理由(決め手)→導入後の変化(アフター)」の順で書きます。読み手が自社の状況に重ねやすく、最後まで読まれやすい構成です。
パート | 書くこと | 文字数の目安 |
|---|---|---|
タイトル | 誰が・何をして・どう変わったか(数字を入れる) | 30〜40字 |
概要 | 会社の紹介、課題・取り組み・成果を3行で | 150字 |
ビフォー | 導入前に困っていたことを、お客様の言葉で | 400〜600字 |
決め手 | 比較した選択肢と、当社を選んだ理由 | 400〜600字 |
アフター | 取り組みの内容と、変化・数字 | 600〜800字 |
これから | 今後の展望と、検討中の方へのひと言 | 200〜300字 |
文字数は当社の支援現場での目安です。全体で2,000〜3,000字ほどあれば、商談でも十分に使える事例になります。
タイトルには「誰が・どう変わったか」と数字を入れる
「〇〇社様 導入事例」だけでは、読み手は自分に関係があるか判断できません。業種・規模と変化を入れます。
弱いタイトル | 改善したタイトル |
|---|---|
A社様 導入事例 | 従業員4名のコンサル会社が、半年で目標を上回る65件のリードを獲得 |
Webサイト制作のお客様の声 | 問い合わせが来なかった製造業のサイトを、図面相談の窓口に変えた方法 |
当社の支援事例で見る書き方の例
当社が支援した、福岡県のコンサルティング企業(従業員4名)の事例を、ビフォー→決め手→アフターの構成に当てはめると次のようになります。社名は非公開です。
パート | 書き方の例 |
|---|---|
概要 | 福岡県のコンサルティング企業(従業員4名)。Webマーケティングを中心とした施策で、半年で目標60件を上回る65件のリードを獲得 |
ビフォー | 少人数の会社で、集客にどんな課題があったかを、お客様の言葉で書く |
決め手 | 他にどんな方法を検討し、なぜ当社の支援を選んだかを書く |
アフター | 半年間に取り組んだWebマーケティングの施策と、目標60件に対して65件という結果を書く |
これから | 今後の取り組みと、同じ悩みを持つ会社へのひと言を書く |
ポイントは、「目標60件に対して65件」のように、目標と実績をセットで書くことです。実績の数字だけよりも、どのくらいの成果だったのかが読み手に伝わります。従業員数や地域を書いておくと、社名非公開でも「自社と近い会社だ」と感じてもらえます。
公開前の確認(先方チェック)で気をつけること
原稿は、公開前に必ず先方に確認してもらいます。ここを丁寧に進めることが、次の事例の協力や、お客様との関係を守ることにつながります。
確認すること | 内容 |
|---|---|
事実と数字 | 数字、時期、社名・部署・役職の表記が正しいか |
出してよい情報か | 取引先名、社内の事情など、公開を避けたい情報が入っていないか |
発言のニュアンス | 話し言葉を整えたことで、意図と違う表現になっていないか |
写真・ロゴ | 掲載してよいものか、先方の社内ルールに合っているか |
使う範囲 | Web、営業資料、ホワイトペーパーなど、どこで使うかの了承 |
確認の期限は1週間ほどで設定し、「修正は遠慮なくお申し付けください」と添えます。先方の社内で上司や広報の確認が必要になることもあるため、急かさないことが大切です。
完成した事例を営業・Web・ホワイトペーパーで使い回す
導入事例は、Webに載せて終わりにするのはもったいない資産です。1本のインタビューから、いくつもの使い道があります。
使う場所 | 使い方 |
|---|---|
Webサイト | 事例ページとして公開。サービスページや関連する記事から案内する |
営業資料 | ビフォー・決め手・アフターを1枚のスライドにまとめ、商談で見せる |
商談後のメール | 相手と近い業種・規模の事例を、お礼メールに添える |
ホワイトペーパー | 複数の事例をまとめて「事例集」として、ダウンロード資料にする |
メルマガ・SNS | お客様のひと言を引用し、事例ページへ案内する |
展示会 | 事例を印刷して配布し、ブースでの会話のきっかけにする |
事例が3本たまると、業種別・課題別に見込み客へ案内できるようになります。毎年いくつかのお客様に協力をお願いする仕組みにしておくと、事例が自然に増えていきます。
導入事例インタビュー 質問票・進行表のテンプレート(Excel)
ここまでの内容を、そのまま使えるExcelのテンプレートにまとめました。依頼メールの文面から、当日の進行表、質問票、記事構成シートまでそろっています。
シート | 中身 |
|---|---|
使い方 | テンプレートの目的、進め方、注意点 |
依頼メール | お客様への依頼メールの文面の型(件名・本文) |
進行表(60分) | 時間・パート・やること・担当・メモ欄 |
質問票 | パートごとの質問・ねらい・当日のメモ欄 |
記事構成 | タイトル・概要・ビフォー・決め手・アフター・これからの記入欄と公開前チェック |

記事内のテンプレート(Excel)は無料でお渡ししています。ご希望の方はお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。
導入事例づくりでよくある失敗
「満足しています」だけの記事になる:具体的な場面と数字を聞けていないことが原因です。「たとえば?」と聞き返し、目標と実績をセットで確かめます。
自社の宣伝が多くなる:主役はお客様です。サービスの説明は、アフターのパートで取り組みとして触れる程度にとどめます。
先方確認で大きく書き直しになる:依頼の段階で公開範囲を決め、当日も「この部分は記事に載せてよいですか」と確かめておくと、手戻りが減ります。
担当者が忙しく、作る時間がない:依頼と候補選びは社内で行い、インタビューや原稿は外部に任せるのも一つの手です。マーケティング代行の多くは、事例記事の制作も業務範囲に含んでいます。
よくある質問
導入事例の協力に謝礼は必要ですか?
必須ではありません。中小企業のBtoBでは、謝礼なしで協力いただけることも多くあります。お礼として、完成記事を先方でも自由に使えるようにする、先方のサイトへのリンクを入れる、などの形で返すのが一般的です。謝礼を出す場合は、先方の社内ルールで受け取れるかも確かめます。
インタビューはオンラインでも大丈夫ですか?
大丈夫です。オンラインのほうが先方の負担が小さく、引き受けてもらいやすくなります。写真が必要な場合は、先方から提供いただくか、別日に撮影の時間をもらいます。
数字が出ていないお客様でも事例にできますか?
できます。件数や金額で表せなくても、「作業時間が減った」「社内で説明しやすくなった」など、具体的な場面の変化があれば十分に価値があります。期間や回数など、だいたいの数字だけでも入れると説得力が増します。
社名非公開の事例でも効果はありますか?
あります。業種・地域・従業員規模・成果の数字がそろっていれば、見込み客は自社と重ねて読めます。実名の事例ほどの信頼感は出にくいため、可能なら実名の事例も少しずつ増やしていきます。
導入事例は何本くらいあればいいですか?
まずは1本で構いません。3本ほどそろうと、業種や課題の違う見込み客にも合う事例を選んで案内できるようになります。増やしたい顧客層に近いお客様から順に、協力をお願いしていきます。
まとめ
導入事例は、知名度で大手にかなわない中小BtoB企業にとって「信頼の代わり」になる
依頼は、先方の負担・メリット・公開範囲の選択肢をセットで伝えると断られにくい
当日は60分の進行表と質問票を用意し、導入後の変化と数字に最も時間を使う
記事は「ビフォー→決め手→アフター」で書き、公開前に必ず先方の確認を取る
完成した事例は、営業資料・メール・ホワイトペーパーなどで使い回す
導入事例づくりに手が回らないなら「JIMOTOの外付けマーケチーム」
当社のマーケティング代行「JIMOTOの外付けマーケチーム」は、導入事例のインタビューや記事制作から、Webサイト・営業資料・ホワイトペーパーでの活用までを専門チームでまとめて引き受けます。
依頼文の作成、インタビュー、原稿、先方確認の進行まで一貫して対応
稼働を15分単位で記録して毎週開示。使い切らなかった分は翌月に繰り越し
月額30万円から(税別)。相談から稼働開始まで1か月未満、内製化までを見据えた支援
→ 料金プランや支援内容を見る(マーケティング代行サービスページ)
記事監修
株式会社JIMOTO Marketing Share Bureau
代表取締役 鶴 智之(プロフィール)
キャリアを通してBtoBマーケティングのクライアントワークに従事。前職では株式会社Resorzの取締役を務め、海外ビジネス支援事業にも携わる。200社以上のマーケティング支援実績と、多数の自治体案件のPM経験を持つ。「マーケティングで地域を元気に」をモットーに、地域企業の成長を支援している。
おすすめ記事
この記事を読んだ方は以下の記事も読んでます!





